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大阪地方裁判所 平成2年(ワ)4926号 判決 1992年10月05日

原告

和田昌文

ほか一名

被告

株式会社阪南造園

ほか一名

主文

一  被告らは、原告らに対し、連帯して各金九四三万四九二円及びこれに対する平成元年八月一一日から支払済みまで年五分の割合による金員をそれぞれ支払え。

二  原告らのその余の請求をいずれも棄却する。

三  訴訟費用はこれを五分し、その四を原告らの負担とし、その余を被告らの負担とする。

四  この判決は、一項に限り、仮に執行することができる。

事実

一  請求

被告らは各自、原告らに対し、各金四三七〇万四七五二円及びこれに対する平成元年八月一一日から完済に至るまで年五分の割合による金員を支払え。

二  請求の原因

1  当事者

被告荒木庸作(以下「被告荒木」という。)は、被告株式会社阪南造園(以下「被告会社」という。)に勤務し、造園業務並びに自動車運転業務に従事している者であり、原告和田昌文(以下「原告昌文」という。)は、訴外和田須磨子(大正一四年八月三日生まれ。以下「須磨子」という。)の長男であり、原告和田克昭(以下「原告克昭」という。)は次男である。

2  事故の発生

次の交通事故(以下「本件事故」という。)が発生した。

(一)  日時 平成元年八月九日午後七時一五分ころ

(二)  場所 堺市深井中町六一九番地の一先交差点(以下「本件交差点」という。)

(三)  事故車 被告荒木運転にかかる普通乗用自動車(なにわ五六そ五五六三。以下「被告車」という。)

(四)  被害車 須磨子運転にかかる足踏み式自転車(以下「須磨子車」という。)

(五)  事故態様 被告車が、南から北に向かい本件交差点に進入したところ、西から東に向かつて横断しようとした須磨子車右側面に衝突し、須磨子に右下肢・腰部打撲による骨盤骨折、右大腿骨骨折、後腹膜下出血等の傷害を負わせ、同月一〇日午前八時三分ころ、死亡させた。

3  責任

被告荒木は、本件事故当時、被告会社の造園業務を終え、被告車を運転して被告会社に帰るため、府道下石津泉ヶ丘線(泉北一号線)を北進走行中であり、本件交差点に差しかかつた際、本件交差点北側横断歩道を注視し、横断者を発見の上、同横断歩道の直前で一時停止して横断者の通行を妨げないようにする業務上の注意義務があるのにこれを怠り、相当な速度で漫然進行した過失により、本件事故を惹起したから、被告らは本件事故による損害を賠償する責任を負う。

4  相続により承継取得した損害賠償請求債権

原告らは、本件事故により須磨子に生じた次の各損害に対する損害賠償債権を相続により二分の一ずつ承継取得した。

(一)  遺族年金 二一六四万八〇七八円

須磨子は、昭和六〇年一月から年間一五八万九九〇〇円の遺族年金を受給しており、本件事故がなければ、平均余命である八四歳まで受給し続けることができたと考えられるところ、死亡時である満六四歳から二〇年間に受給し得た遺族年金の総額は、ホフマン方式により中間利息を控除すると、次の算式のとおり、二一六四万八〇七八円となる。

一五八万九九〇〇円×一三・六一六〇=二一六四万八〇七八円

(二)  他の逸失利益 三二三一万六八七七円

須磨子には、本件事故当時、次のとおりの収入があつた。

(1) 農業収入 二二七万八二四五円

須磨子は、本件事故当時、トマト栽培で年間一五一万三九一三円、さといも・さつまいも栽培で年間二九万四一四一円、ねぎ栽培で年間三八万八二七一円、米栽培で年間八万一九二〇円、年間合計二二七万八二四五円の収入があつた。

(2) 駐車場等経営 一八七万七九四〇円

須磨子は、本件事故当時、貸ガレージにより年間六一万三四四〇円、青空駐車場により年間一二六万四五〇〇円、年間合計一八七万七九四〇円の収入があつた。

(3) 貸地貸家経営 三四五万三三六〇円

須磨子は、本件事故当時、貸家により年間一三五円、貸地により年間二一〇万三三六〇円、年間合計三四五万三三六〇円の収入があつた。

(4) 和裁 二五万円

須磨子には、本件事故当時、和裁により年間二五万円の収入があつた。

以上(1)ないし(4)の合計は七八五万九五四五円であり、須磨子の稼働可能年数は七年であるから、生活費として三〇パーセントを控除し、中間利息をホフマン方式により控除すると、須磨子の逸失利益は、次の算式のとおり、三二三一万六八七七円となる。

七八五万九五四五円×(一-〇・三)×五・八七四=三二三一万六八七七円

(三)  慰謝料 二〇〇〇万円

須磨子の慰謝料としては、二〇〇〇万円が相当である。

5  原告ら固有の損害

原告らは本件事故により、次の損害を受けた。

(一)  原告ら固有の慰謝料 各三〇〇万円

(二)  葬儀供養などの費用 計三八〇万三八八一円

(三)  弁護士費用 計四〇〇万円

6  以上の損害のうち、原告らは、被告ら各自に対し、各四三七〇万四七五二円及びこれに対する平成元年八月一一日から完済に至るまで年五分の割合による金員の支払を求める。

三  請求原因に対する認否

1  請求原因1及び2の事実は認める。

2  請求原因3の事実中、被告荒木の注意義務の内容は争い、本件事故当時被告車が相当な速度で走行していたことは否認し、その余の事実は認める。

3  請求原因4、5の事実中、須磨子に一三〇〇万円の限度で慰謝料損害が生じたことは認め、その余は不知ないし争う。

四  抗弁

被告荒木は、被告車を運転し、時速約六〇キロメートルで走行し、本件交差点に差しかかり、青信号に従い、同交差点を南から北に通過しようとした際、同交差点北側横断歩道を赤信号を無視し、西から東へ横断した須磨子車と衝突したものであるから、被告荒木には、過失がないし、仮にあるとしても、須磨子には九割の過失があるから右割合に応じた過失相殺がなされるべきである。

五  抗弁に対する認否

争う。

理由

一  請求原因1について

請求原因1(当事者)の事実は当事者間に争いがない。

二  請求原因2、3及び抗弁について

1  請求原因2(事故の発生)の事実は当事者間に争いがなく、同3(責任)の事実は、被告車の速度、被告荒木の注意義務の内容を除き、当事者間に争いがないところ、右争いのない事実に加え、後掲の各証拠、証人長谷川昇平の証言、被告荒木本人尋問の結果を総合すると、本件事故の態様及び被告荒木、須磨子の過失に関し、次の事実が認められる。

(一)  本件交差点は、南北に通じる府道堺狭山線の北行道路(以下「本件府道」という。)と、東西に通じる市道(以下「本件市道」という。)とが交わる、信号機により交通整理の行われている交差点である。

本件府道は、中央分離帯を挟んで南行車線と北行車線からなり、北行車線を南から走行した場合、二車線(幅員七メートル)が本件交差点南側付近で三車線(幅員一〇・五メートル)となり、さらに同交差点北側で二車線(幅員七メートル)となる。右北行車線の東側には路側帯(〇・五メートル)、中央分離帯があり、さらにその東側に南行車線があり、また、右北行車線の西側には、一メートルの路側帯、二・五メートルの自転車道、三・二メートルの歩道があり、路面はアスフアルトで舗装され、平坦である(乙第一五、一六号証)。

本件府道の北行車線は直線で、本件交差点付近の南側から北側への見通しは良好である。また、本件交差点付近の夜間の明るさは、交差点内の水銀灯や交差点南西角の寿司店の照明のためやや明るい。本件府道は、速度規制は法定速度(時速六〇キロメートル)であり、終日駐車禁止であつて、夜間の交通量は多い(乙第一五号証)。

本件交差点には、その北側横断歩道に横断歩行者のための信号機(以下「本件横断歩道信号機」といる。)と、本件市道から進行して来る車両のための信号機(以下「本件市道信号機」という。)が、本件府道の北行車線を北進する車両のための信号機(以下「本件府道信号機」という。)がそれぞれ設置されており、また、本件府道には、本件交差点の南側約六五〇メートルの地点に野々宮神社北西交差点があり、両交差点の信号機は広域制御され連動している(乙第一五号証)。

なお、被告車の夜間の前照灯による視認距離は、本件事故後に行われた同車種による実験結果(被告荒木視認)では、下向きの場合が約四五メートル、上向きの場合が約一〇五メートルであつた(乙第一三、一四号証)。

(二)  被告荒木は、平成元年八月九日午後七時一五分ころ、南から来て、野々宮神社北西交差点で信号待ちの後、青信号に従い発進し、本件府道の第二車線(右交差点手前では二車線ある右側車線、本件交差点付近では三車線の真中車線)を時速約六〇キロメートル、前照灯下向きで北進中、煙草を買うことを思いつき、ズボンの左ポケツトから小銭入れを出したが、受け損なつて床に落とし、探そうとして瞬時、脇見運転をしたため、本件交差点内を西から東へ自転車に乗つて横断中の須磨子を約二十数メートル前方に認め、警笛を吹鳴すとともに急制動の措置を採つたが及ばず、本件府道の北行車線の本件交差点中央付近で被告車左前部を須磨子車に衝突させ、被告車は衝突地点から約十数メートル北まで進行して停止し、須磨子を衝突地点から約三〇メートル近く跳ね飛ばし転倒させた(乙第一二、一五号証)。

2  以上認定の事実によれば、被告車の本件交差点進入時、本件府道信号機の表示は青、本件横断歩道信号機及び本件市道信号機の表示はいずれも赤であつたと推認せざるを得ない。

この点について、原告らは、須磨子は、本件横断歩道信号機が青信号の点滅時、赤に変わる寸前に本件府道に進入したものであるところ、本件交差点において、本件道路信号機が赤から青になるまでの時間は、本件横断歩道信号機が青の点滅を始めてから約一三秒、赤に変わってから約九秒であるから、被告荒木が本件府道信号機の赤信号を無視して本件交差点に進入したと主張する。

原告らの右主張は、本件交差点における各信号の周期がその主張のとおりであることを前提としているが、右周期に関する証拠は、原告克昭作成にかかる陳述書(甲第二一号証)のみであるところ、右陳述書における信号の周期の記載部分は、原告らが現地調査した結果であり、右現地調査の時期は、右陳述書の作成日であり、かつ、原告克昭の本人尋問が実施された日である平成四年一月二三日に近接した日とされており(同人尋問調書四丁裏)、その計測方法は、原告らが自ら時計により計測したというものである(同調書五丁裏)。しかし、専門家でない原告らが行った右計測方法がどれほど正確なものかには多大な疑問が残る上、右計測の結果である信号の周期が本件事故が発生した約三年半前の周期と同じであるという保証もないから、原告らの主張は、不確実な数値を前提としており、にわかに採用し難いものがある。

また、原告らは、須磨子が本件横断歩道信号機が点滅し、赤に変わる寸前本件道路に進入したと主張し、それにそう長谷川昇平(本件事故当時小学校六年生)作成の陳述書(甲第二〇号証)及び同人の証言を引用する。しかしながら、同証言によれば、同人は、本件横断歩道を渡る直前、須磨子がどこにいたかは目撃しておらず、それ以前に、自転車を引いて歩いている須磨子の傍らを自転車に乗って通り過ぎたことなどから、自分の後に続いて須磨子が来ていたものと判断したとのことであるから(同人証言調書一一丁表、二〇丁表、裏)、小学六年生が自転車に乗って走行する場合と六四歳の老女が自転車を引いて歩行する場合の速度差を考慮すると、右長谷川が本件横断歩道を横断し始めた直後、本件横断歩道信号機が青点滅から赤に変わったからといって、須磨子も右点滅時に横断し始めたものとは速断し難い。

3  なお、乙第一号証ないし第一二号証及び被告荒木本人尋問の結果を総合すると、本件事故後の被告荒木の行動につき、次の事実が認められる。

被告荒木は、衝突後、いったんは被告車を本件府道左側に寄せ、停止させたが、衝突時の衝撃、音、フロントガラスの左前部がクモの巣状にひび割れていたこと、須磨子が身動き一つしなかったことから、須磨子に重症を負わせ、あるいは死亡させたかもしれないと感じ、被告車を発進させ、逃走した。被告荒木は、フロントガラスがひび割れていたことから、被告車を自宅に持ち帰れば近隣の人々に事故を起こしたことを気づかれてしまうものと考え、被告会社に行き、そのガレージに被告車を停めたが、点検してみると、被告車は、フロントガラスのみならず、左前部のバンパー、前照灯が壊れ、ボンネットが浮き上がっていたことから、事故を隠蔽するためには早急に修理することが必要と感じ、翌八月一〇日、大阪市天王寺にある昭栄自動車に被告車を持ち込み、本件府道で斜面から落ちて来た乳母車と衝突したと言って、破損箇所の修理を依頼した。

4  以上によれば、被告荒木には前方不注視の過失があるというべきところ、被告会社は被告荒木の使用者であり、本件事故は被告会社の業務執行中に発生したことは当事者間に争いがないから、被告荒木は民法七〇九条に基づき、被告会社は同法七一五条に基づき、本件事故に関し生じた損害を賠償する責任があるものと認められる。

5  しかし、右認定事実によれば、須磨子にも、信号を無視して本件交差点を横断した点に落ち度があるというべきところ、横断の態様は自転車とはいえ歩行者の場合に近いと考えられること、被告荒木の過失は脇見運転に基づくものであつて著しいものであること、その他右認定等の事故の態様等を考慮すると、須磨子には本件事故に関し、五割の過失があると認め、後述する須磨子に生じた損害から右割合を減額するのが相当である。

三  請求原因4の損害について

1  遺族年金について

原告らは、須磨子は夫である訴外和田要の死亡により、地方公務員等共済組合法(以下「共済組合法」という。)四五条、九九条に基づき、遺族年金受給権を有していたところ、本件事故により右受給権を喪失したものであるから、それにより損害賠償請求権が発生し、原告らはそれを相続した旨主張する。

しかしながら、右遺族年金は、その制度目的が地方公務員の死亡に際し、その遺族の生活の安定と福祉の向上に寄与することにあり(共済組合法一条)、要扶養者の要保護状態に応じ支給停止の制度が設けられていること(同法九九条の四)、受給権者の死亡のほか、法定の事由、例えば受給権者の婚姻により受給権を失うこと(同法九九条の七)などを併せ考えると、遺族年金はすべて、受給権者の生存中の生活費に充てられるべきものと考えるのが相当であるから、受給権者の遺族の相続される性質のものはないというべきである。

2  貸ガレージ、駐車場経営、貸地貸家経営について

原告らは、須磨子は、本件事故当時、貸ガレージにより年間六一万三四四〇円、青空駐車場により年間一二六万四五〇〇円、合計一八七万七九四〇円の収入があり、また、貸家により年間一三五万円、貸地により年間二一〇万三三六〇円、合計三四五万三三六〇円の収入があつたところ、本件事故により、これらの利益を喪失した旨主張し、原告克昭は、右主張にそう供述をする(原告克昭尋問調書三一丁裏ないし三三丁表)。

しかしながら、これらの収入の大部分は労働の対価とは目し得ない不動産所得であり、その性質上、須磨子の死亡後相続人である原告らが固有の収入として取得することが可能であるから、須磨子が喪失した得べかりし利益とみてその相続を認めることは、実質上、相続人に不動産所得の二重取得を認めることになり相当ではない。そして、右収入のうち労働の対価と目すべき部分がいかほどであつたかを確定するに足る証拠もないから、この点についての原告らの主張は採用しない。

3  農業、和裁収入について

原告らは、須磨子は、本件事故当時、トマト栽培等で合計二二七万八二四五円の農業収入があり、また、和裁により年間二五万円の収入があつた旨主張し、それにそう証拠として、各種統計資料(甲第一六、一七号証)及び登記簿謄本(甲第五ないし一二号証)を提出する。

しかしながら、右農業収入については、当時六四歳であつた須磨子が四〇〇〇平方メートルを越える田畑をひとりで耕作することができたとは到底考え難いところ、他人を雇い入れた費用その他の経費等を認めるに足る証拠もないから、原告らの右主張はそのまま採用するわけにはいかない。

また、和裁による収入についても、原告克昭は、一着につき二万五〇〇〇円とみて、月に一着作るか作らないかであるから、年間二五万円の収入があつたと供述するが(原告克昭一九丁裏)、これとて客観的裏づけのない推測にすぎず、他に右収入額を認めるに足る証拠はない。

右にみたように、須磨子の農業収入、和裁による収入がいかほどであつたかを具体的に認めるに足りる証拠はないが、農業及び和裁を行い、さらに、弁論の全趣旨から、須磨子は、家事労働にも従事していたものと認めることができるから、これらによれば、須磨子は、本件事故当時、少なくとも同年齢の女子労働者の平均賃金を下回らない程度の年収を得ていたものと推認するのが相当である。

ところで本件事故が生じた平成元年の賃金センサス第一巻第一表による産業計・企業規模計・学歴計・女子労働者の六〇歳から六四歳までの平均賃金が二七〇万八三〇〇円であることは当裁判所にとつて顕著な事実であるから、須磨子の年齢その他諸般の事情を考慮すると、須磨子は、本件事故時である満六四歳から満六七歳までは右平均賃金を下回らない年収を得ることができ、その後、平均余命年数の二分の一に相当する満七一歳までの四年間は、右平均賃金の二分の一に相当する年収を得ることができたものと推認するのが相当である。

右収入額を基礎とし、生活費として二割を控除するのが相当と認め、新ホフマン方式により年五分の割合による中間利息を控除して、須磨子の本件事故時における逸失利益の現価を算定すると、次の計算式のとおり、九三二万一九六七円となる。

二七〇万八三〇〇円×(一-〇・二)×二・七三一=五九一万七〇九三円(一円未満切り捨て。以下同じ)

二七〇万八三〇〇円×〇・五×(一-〇・二)×(五・八七四-二・七三一)=三四〇万四八七四円

合計九三二万一九六七円

4  慰謝料について 二〇〇〇万円

本件事故の態様、死亡という結果の重大性、被告荒木が死亡の可能性がある人身事故を起こしたことを認識しながら事故後現場から逃走したこと、須磨子の年齢、職業等諸般の事情(後掲原告ら固有に認められる慰謝料額を含む。)を考慮すると、慰謝料としては二〇〇〇万円が相当と認める。

5  以上の3、4の損害を合計すると、二九三二万一九六七円であり、前記須磨子の過失割合に応じ、その五割を過失相殺により減額すると、一四六六万九八四円となる。原告らは、右に関する損害賠償債権を法定相続分に従い各二分の一ずつ相続したから、各原告の相続した額は、各七三三万四九二円となる。

6  原告ら固有の損害について

(一)  葬儀費用 各五〇万円

須磨子の年齢、家族関係、その他本件において認められる諸事情を考慮すると、葬儀ないし供養の費用としては、各五〇万円、計一〇〇万円の限度で相当因果関係のある損害と認めるのが相当である。

(二)  各原告の慰謝料 各二〇〇万円

本件事故の態様、結果の重大性、被告荒木の逃走等の事実に加え、各原告の生活関係、須磨子の年齢、その他諸般の事情を考慮すると、各原告の慰謝料としては、各二〇〇万円と認めるのが相当である。

(三)  以上の原告ら固有の損害合計は、各原告らにつき各二五〇万円となるところ、前記認定のとおりその五割を過失相殺により減額すると、原告らの固有の損害合計は、各一二五万円となる。

五  弁護士費用 各一〇〇万円

以上の原告らの損害合計は、八五八万四九二円となるところ、本件事案の内容、審理経過、認容額その他諸般の事情を考慮すると、弁護士費用としては、各八五万円の限度で相当因果関係のある損害と認めるのが相当である。

六  まとめ

以上の次第で、原告らの被告らに対する本訴請求は、連帯して各金九四三万四九二円及びこれに対する須磨子の死亡の翌日である平成元年八月一一日から支払済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるからこれらを認容し、その余は理由がないからいずれも棄却することとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法八九条、九二条、九三条を、仮執行宣言につき同法一九六条一項をそれぞれ適用し、主文のとおり判決する。

(裁判官 林泰民 大沼洋一 小海隆則)

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